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にのねぬな

にのねぬな

米粒に字を書くがごとく

バリガムランに特有なコテカンという奏法は、2人で一つの音の流れをつむぎ合わせていく。

例えば、ガンサ(鉄琴のような楽器)で言うと、
★シドシドシドシドシドシドシドシド
というメロディーを2人でたたくとすると、
Aさんは、シの音、Bさんはドの音を担当する。
要するに、この場合は、2人の人が交互に音をたたく。
2人でたたいているけど、1人でたたいているかのように、なめらかにかつ均等に
つながって聞こえなくてはいけない。とぎれたり、よたよたしていると格好悪い。

また、コテカン奏法を使う部分は、たいてい速い。
(コテカン奏法というのは、そもそも、とてもテンポの速い部分=1人ではとてもたたけないほど速い部分をたたくために、2人で音を分担してたたいている)
上記の★のメロディーをすべて16部音符でたたいているとすると、
四分音符=180くらいのテンポでたたかなくてはならない曲もある。
数字で書くと、イメージがわかないかもしれないので、
まず、一秒間に3つづつ、手拍子をたたいてみて欲しい。
その一つの手拍子の間に、2人で交互に2つずつ、合計4つ音を入れるとなると・・・
これは、か・な・り速いテンポであることが、分かってもらえるだろう。

★の場合、Aさんがたたく、たくさんのシの音とシの音の隙間に、
Bさんは、ドの音をたたかなくてはならない。
さらに、ただ隙間に入っていればいい、ということではなくて、
シとシの間の隙間のちょうど真中にドの音を入れないと、かっこ悪い。
この、”わずかな隙間のちょうど真中”に、音を入れるのは至難の業。
でも、だからこそ、出来た時には、とてもとても気持ちが良い。

最初は、どこが真中なのか、よく分からない。
でも、何年もやっているうちに、だんだん真中を探せるようになってくる。
Aさんがたたいているシの音も、自分がたたいているつもりで、ドの音を挟み込んでいかないと、上手くつながらない。

昔、米粒に字を書ける人の話をテレビで見たことがある。
私たち一般の人は、とても米粒のような狭い場所に字なんか書けない、と思う。
でも、書ける人には、米粒が普通の人よりも大きく見えているらしい。
ガムランのコテカンも同じかな、と思う。
私たちには、ほんのわずかな音の隙間にしか思えない部分も、バリ人にとっては
きっと大きな隙間に思えるのだろう。

私も、12分の一秒ごとに連続する音と音の間の隙間を、”大きな隙間”に感じられる日は来るのだろうか・・・



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